zatsu_ten6の日記

ペンシルベニア在外研究、滞在日記

読書三昧で

日本語の本が届いたから久しぶりにそういうのも読む。深井「プロテスタンティズム宗教改革から現代政治まで」現代の保守主義リベラリズムの源流を描く(中公新書)。ルター派の位置づけがとてもわかりやすく、より正確な見取り図を手にすることができる。ドイツの保守主義とアメリカ、イギリスとの違いがよくわかる。
 井上『自由の秩序』(岩波現代文庫)講演録みたいな感じだからさらさら書かれているが、心理系からしたらこういう堅い言い回しで講演しているのかと驚き、それに聴衆がついて行っているのも驚き。よくある基本的な法哲学による自由、正義の整理を一歩踏み出して、ロールズのあいまいさを越える井上氏ならではの「普遍化不可能な差別の排除要請として理解された普遍化可能性原理」を持ち出して強調しているところが興味深かった。これが本講義でなくて、終わってからの場外(ビアホール)で出てきた議論であるところがまた面白い。真髄は聴講者の質問とのやりとりから現れる。ちゃんと岩波講座本を読まないといけない。
 齊藤「不平等を考える:政治理論入門」(ちくま新書)穏当な立場から徹底して平等の議論、連帯の議論、そして「認知的多様性」を議論する点が勉強になった。昔ちょっと異なるが多面的認知尺度ってのをつくったことがありました。
 東 『ゲンロン0 観光客の哲学』上記のような議論からすると荒いし、実際詳細な議論はどうなんだろうと思う個所もあるが、強引にばんばんと整理する腕力と、要するに目指すのはどういうことかという立場を貫徹している自分で哲学する哲学本としてよい評価。でも頭のいい人たちと付き合うのはたいへんやなぁ。原典を読んでいないので、なんとなく?それでいいの?という箇所もあるのだが、切り口OKみたいな感じ。
 阿満『日本精神史:自然宗教の逆襲』 「日本人」とは、はたして何者か?(筑摩書房) 今回の科研に一番直につながっている話であるが、これを今読んでいる最中。細かいこと言い出したら日本宗教史というか宗教心の歴史はそれはそれは面倒。社会心理的にどの程度ざっくり切って、どこに目をつけて実験パラダイムに落とし込むか。宗教心にピンと響く刺激を準備することが肝要。簡単に文化論にしてしまう部分は、趣味としてとっておいてなるべくまとまるまで断言(あるいは強く言うこと)を控えるべきか。
 これと対応して欧米の素朴な宗教心なども知る必要があるので、そこを補う意味でも宗教の歴史のなかでどのような圧力やいざこざがあったかを辿ることも大事。
 弾圧の側面が目立って分かりやすいが(魔女裁判とか)、先の『プロテスタント』においては土俗宗教的なものとうまく融合させて受け入れを広めさせていった側面(たとえば、地域の土俗の神を『聖人』という概念で祀り上げるとか)を指摘していて興味深かった。
 あまり荷物増やさないようにと思っていたけど、勉強できなければ本末転倒なので、最後段ボール引っ越し便で送る覚悟で徐々に増やしていくつもり。あまり7月の移動前に増やせないですけれども。ここの住居もあと3週間あまりだ。