zatsu_ten6の日記

ペンシルベニア在外研究、滞在日記

【ありゃあ】院生に逆戻り【発表が!】

ほんとはジョンのゼミで発表とかはするつもりがもともとなかったが、なんか最初の会合ののりで、一瞬やった方が議論の得かもと、他の参加者より少ない「2回」を引き受けた。第3回と第9回だ。

 

なんとなく、最初をガイダンス・・0回と勝手に思っていて、3週先か、ちょうどいいかなと思っていたら、次がもう第2回だった。第3回って来週やん。大失敗。

 

今週末、家族がニューヨークに来るのだ。息子がついにとれた休日を投入をして(夏休みの分)、土曜日に到着、もしかして木曜は帰る日では?送っていけないぞ。 よくこういう失敗するんですよね、わたしは。瞬間の選択でよく負けの方をとる。とっさの勝負に弱い。

 

まぁ文献読むの楽なようにステレオタイプ、偏見でやったし、昨日もうひとつ論文読んだし、まぁ仕方ない。

 

で、日本とは違うから課題論文or書籍(必須5本くらい書いてある)を要約して報告するのではなく、そこからヒントを得てなんかしゃべる。まぁICUの大学院で自分がやっている授業と同じスタイルだ。

 

なので、たいていの論文は既読ではあるが、もちろん忘れていたりする。そこを精密に読み直す必要もないから、ヒルビリーの話しようかと。もうさんざ去年とかゼミでやっているかもしれないが、日本人が発表するのもおもしろいだろう。システム正当化の日本でのありようという文化差の話と最後、ヒルビリーエレジーの本にかかわる話をして10分。報告10分、議論30分というアメリカ仕様だから、わーわー言えるのがおもしろいかもと。でもあまりワーワー言われると聞き取れないですけど。雑談はこわくて、ゴードン夫妻とゴルヴィとそろったカフェでの雑談は3割くらいは分からなかったもんなぁ、おもしろい細かいニュアンス、笑いどころとかが十分わからないですよね。夫人はなんか女性らしく気遣って、ときに確認してくれましたよね。こちらから話をするタイミングも用意してくれて、話に入りやすいようにしてくれたし。これは新鮮な経験でした。今までの会合、集まりでそういう配慮を受けたことは(外国で)人生上なかったから。

 

それはともかく、予想以上にヒルビリーは興味深かった。アパラチアのふもとでの生活(途中からオハイオ)での低階層白人がどんな日常を送っているのか自身の自伝的歴史を赤裸々につづった社会科学のトレーニングも受けた現、弁護士?だっけ。法科大学院を卒業した人が書いたもの。低階層からの奇跡の脱出みたいな。

 

他人の反応とか、システム正当化とか読んでいるとまぁそうなんだろうなとも思うし、社会が動かなかったりするのはそうなんだろうなと思うのだが、自分自身が子どもの頃からどちらかというと反発系、革命系の人間だったので(社会心理界隈ではあまりそう思われていないと思う。おとなしくすることで就職を得たため)、素直にシステムを認めてしまうという思考がうまく想像できないのだ。欠点なんかすぐ目に留まるし、「ここはこう変えた方がいいんじゃないか」とすぐ思うので、なぜ現状の制度に無批判でいられるかが本当にピンとこないのだ。

 

で、ヒルビリーの本を読むと確かに本当に壮絶で「何かを考える」どころではない日常。バウマイスター的なあれだと、制御資源が枯渇しきっているから(それどころか経済資源も空腹もすべてのものが)、持続的にがまん強く何かを続けられない。

 

高階層のリバタリアンは彼らは怠け者だという。確かにこの本で登場する彼の友人は、せっかく職にありついたのに、無断欠勤、遅刻で解雇される。一面では「努力が足りないんだ。がんばりが足りない」のはそのとおりなのである。だが、資源が奪われた人間にとって、持続的努力はそれこそがとてつもなく難しく、たぶん体調や栄養バランスの問題(ビタミン、ミネラルとか)もあるのだろうが、持続したくてもできない。そしてまたそういった中産階級的な勤勉さを養うような家庭教育も受けず、所属する学校でも同じような人たちばかり。むしろ持続的なプチブル的努力をあざ笑う風潮がはびこる。欲しかったら、盗んでくりゃあいいじゃん、その方がずっと簡単、みたいなカルチャーにいたら、なかなか上昇はできない。ドラッグにそまって刑務所とかを出たり、入ったり。

 

これまで日本でも出版されている貧困系の社会学の本はあまり読んでいなかったので新鮮。闇金ウシジマくんのマンガは、クラスメートが映画にしているので少し読んだが、闇金はまた極端なという気もしたが、そこに現れるやる気のない、生活破綻したボロボロの人間たちは実在するし、この繁栄の国アメリカの南部、中西部を舞台にしたこの本でもたくさん登場するわけだ。

 

ヒューリスティックとしてのシステム正当化、非意識的に浸透する現状肯定とかいうのをテーマに発表を構築しようかとパワポを準備中。

 

課題に取り組むなんて、ふだん自己課題は出すけど、こういうの久々で読書会とはまたちょっと違った感じの緊張と挑戦感が。ゼミに日本出身がひとりいることがわかったので、いよいよ困ったら通訳してもらおう。