zatsu_ten6の日記

ペンシルベニア在外研究、滞在日記

ミスサイゴン

はい、お友達がいらしたので、貧しいながらも最後はっちゃけました。Jazzクラブに行ったり、本日はミュージカル、ミスサイゴンを見て参りました。

 

昔ずっとロングランをしてましたが、上演されなくなり、それがまたリニューアルです。

 

このご時世に日本人であるわれわれが見に行くのも、サンフランシスコやマンハッタンの像とも結びつくシーンがあるだけに、いいのかおいおいって感じがしましたが、2人で行くなら心強いしと思い、むしろチャンスかと。

 

以前の上演を見ておりませんので比べることができません。すいません。しかしおそらく違うかなと思ったのが2幕冒頭。ベトナムに残してきた軍人の子どもたちの支援活動を行うというアメリカにおいても反省的行動が行われていることを強調するシーンからスタートし、そこではベトナムの子どもたちの画像がスクリーンに次々現れます。昨年日本公演もあったようなのでご覧の方もおられるかも。

やはり「正義」を重んじるアメリカとしてはいけなかったことはいけなかったと(シナリオ的に)正面から向かい合い、そこに生じた悲劇というものの意味を単なる悲恋物語ではなく、取り上げていると、この頃の時代ではそりゃそのまま妙な差別意識まるだしの上演では共感も得られないし、観客も気持ちよくないし、そうした仕掛けは必須だと思われますよね。

 

そうした建前が重要な国でありますから、国内のさまざまな差別だってたくさん残っていてひどいけれども、事件が起こるたびに(トランプさんでなければ)、それはひどいことだ、過ちを繰り返してはいけないと政府要人は繰り返して言うし、建前上、アメリカは人権をとても重要視し、正義を貫こうとしている国家なのだという御旗はしっかり立てるということですよね。

 そこを横から「実際は・・」とか「こんなこともあるじゃん」とか言っても外交的な政府間のやりとり-そこは当然御旗の世界なわけですから意味がないわけです。(平等の実現のための運動では文脈が違います) そこの理路を全く理解せずに、日本が振る舞うと致命的な失敗をするわけで、「はい、日本さんは今どういう建前、理想で国を運営しているつもりですか?」と問われたときに「従軍慰安婦は国の命令ではないしゴニョゴニョ」とか説明しても事実としては他の問題で軍の司令で明らかにやっていた地域もあるわけで、全体として見渡した時に特定的に朝鮮半島ではどうかと問題を(国際的には)矮小化しても(オランダだって被害を受けている)、西洋社会の共感はちびっとも得られないわけですよね。

 

「反省」の何が怖いのかよく分かりませんが、「反省」を示すことこそが、「その時」と「今」を切り離す証拠でもあり、また有効な示し方でもあり、むしろ、反省をしぶると「あのときと今も同じなのか????」という驚き、まるで今も当時の軍政に近い統治失敗形態の政府がそのまま続いているの??という驚きを生ぜしめるだけですよね。反省により実際、援助資金を出したわけですが、せっかく資金を出した意味も「反省したから今はもうあの時とは違って、現政府、日本はあのときの日本と切り離されている。その上で過去の日本のことについてこれだけ資金を供出して役立てていただきたい」とやっているわけだから、それが全くアメリカとかには伝わらないんじゃないでしょうかね。とにかく簡単な話、「反省しないやつ」=「悪い奴」というヒューリスティックなども容易に働きますから、しかもその上、検討している議会場で横暴、礼を失した振る舞いを目の前で見せていたわけですから、当然、「な~るほど、こういう風に反省していないのだな、それならやっぱり像は必要だ」と中立的な考えしか持っていなかった人もこぞって像設置の公共的是認に賛成してしまうということで、この「狙い」と「呼び込む結果」が常に藪蛇で逆効果を平気で招くのは戦争時期の日本とそっくりなところもありますね。だから設置反対を暴言的に展開している人たちは確かに「何もあの時代と変わっていないわ」という国際的な目にさらされるわけで、残念ながらそういう人がもしたくさんおられるのなら、戦前、戦中と今の日本はしっかり連続していますと言わざるを得なくなるわけですよね。

 

こういうのは方針の問題だからまさに今向かっている政府の方向とそのもたらす効果はよく検証した方がいいってもんですよね。わたしはそう思います。プライドを守ろうとしてプライド、日本の尊厳を汚しているという。

 

だから正しかったことは何か、そうした意識を前提にして、過去の物語も描く・・・そういった意識が垣間見られたミュージカルでした。ちょいと残念だったのは、土曜日のマチネだったので替えキャストで主役カップルはこれから楽しみなんだろうけど、ブロードウェイでは初舞台(といってももう今日まで何回もやっているわけだが)で、声量が弱く、キムは魂のある歌を歌いましたがやはりもうちょっとボリュームあればなぁと思わされるところが諸所ありました。

エンジニアは最高によかったです。ジョンも。

 

ということでした。最後にこういう経験もできてよかったです。