zatsu_ten6の日記

ペンシルベニア在外研究、滞在日記

職権構造からの解析

社会的・状況的要因を重視する社会心理学の観点からは、たとえばある政治状況がよろしくないと感じているとき、それを担う個人や政治家のひとびとの個人的思想傾向や人柄(うそつきとか)に帰属する批判も起こりがちであるが、「それ以外」の要因にも目を向けてみることも有益であろう。

 

たとえば、日本では自民党内の主流の変遷や思想傾向の変化が見られるのだとしたら、それが利権構造とどう連動しているか考えてみる。

 

話を見えやすくするためにあえて簡単な「例題」として、思い切り単純化して描いてみれば、仮に「昔」は自民党員はもっとリベラルであったが、今右に振れているというのが本当に事実だったすれば・・・。

 

かつての利権構造では、開発の誘致や大型公共工事プロジェクトによってキャッシュバックや裏金の賄賂で潤っていたとする。前提に「政治家になりたがる人は権力好き」ということを措定してみると、「権力ピラミッドの上に行きたがる」という命題が演繹される。上に行くには通常金がいる。金の出所は主にふたつで、「元々資産家である。資産家の家系である」か「自分で稼ぐ」ということになる。

 

この後者の「自分で稼ぐ」派は、権力を得るためにどんどん新たな金が必要となるから、賄賂的利権に結びつく。それで一昔前の日本ではときどきこういうのは立件されてつかまるが、その背後にはつかまらなかった水面下の氷みたいなのがドンとあって、要するに社会全体でこうしたことに甘い傾向があったから、それでいけてたのだろう。

だから建設族などの建築利権は、内需拡大をうたっていて産業振興していればいいわけだから(新たな工場用地取得や工場建設なども含む)、旧大蔵省と建設省運輸省あたりががんばっていればいいという非常に内向きの視線で問題なかった。

 

これらの内需は平時の需要だから「明日戦争になる」ときに家を建てるやつも設備投資するやつもいないわけだから、穏便に平和を追求した方がいい。これらが旧田中派経世会)や旧大平派(宏池会)系の保守本流のあり方で、平和の追求と穏便な中道的語りでよかったわけだ。

 

しかし、バブルで最高の土地、建設利得を得たあと、それは逆に不良債権となり、この不況を経て内需が縮小したあとには、もうけ口は限られるようになった。もともと大きな土地が開発されまくってきたわけだから、こうなると残っている大きなものは国有地払い下げ、用途の変更(まさに長州藩下屋敷だった防衛庁の跡地がミッドタウンとして開発されるように)であり、そうしたなか森友問題みたいに払い下げ利権などが起こるわけだ。動かせる土地が限られるもんだから、最近は文科省を通して、巨大な「大学用地」を動かすような話があり、うまくいかないと文科省以外の「特区」みたいなので土地取得を容易にしたり、あるいは省庁天下りで大学理事となる人が大学の土地転がしをしたり、大学用地の切り売りをしたりして儲けるのだ。

 

しかし、これは所詮旧モデルであり、限界がある。同様に電波利権や送電線利権みたいなものも突き上げが激しく、だんだん安泰とはいえなくなってくる。

 

そうしたとき、アメリカが典型的にやっているような戦争利権みたいなものがあり、軍需産業で稼ぐということ。この場合は従来とは異なり、「平和ではいけない」ので、敢えて「平和が脅かされる」ことをプロパガンダする必要がある。人々に不安の脅威を受け付けることによって高額の武器、設備購入が受け入れられやすくなる。安全が脅かされたら何もかも仕方ないのでと、特別予算も振り向けやすいのだ。仮にここに他国の資金などが流れいるとしたら利権もでかくなる。

 

どこの資金かはわからないが、そうした資金の蓄積が○○会議みたいなところを経てばらまかれると、右寄りの発言をした方が「儲かる」という利権構造が成立する。昔はそんな発言では全く儲からず、却って攻撃を受けていたのが、逆に利権構造となるのだ。

 

そう考えれば、政治家が右寄りになるのは個人的思想がどうとかいうよりも、利権のある場所、金の来る場所に惹きつけられて、「望まれる発言・行動」をとるようになっていくという発展プロセスが仮説として考えられるわけで、検証するならそうしたことをデータから検証すればいいのだと思う。裏金の流れをデータ化することが困難だからデータ分析による研究はついつい表の顔の分析しかできなくなる。現実に「見える」(「ある」ではない)ものしか分析できないのが、データによる現状分析だから、わたしのように見えないものの方がずっと好きというたちでは、現在のデータがそれほど興味をひかない。しかしあるいは、だんだん予測がすごくなっていくだろうから、現状からはじき出した将来予測みたいなところから面白いことを考えられるかもしれないが、それも裏金とか見えない変数なしでの予測だから、どうだろうかなぁとは思う。

 

だから自民内でいまどき中道っぽいこと言っていても受けないし、なんの得にもならないし・・・という風に時代が変わってきたのかもしれない。

 

そもそも「政治家になりたい人」は「何かを変えたい」モチベーションの高い人もいるかもしれない(単に大もうけしていばりたいだけでなく)、自民は従来変えるのではなく「維持する」政党だったわけだから、それなのに「変えたい」病の人がおおぜい自民に来たら、現状を変革、維新みたいに右巻き転回というのもひとつの解だ。これは個人差要因と状況との交互作用だが、そういったこともあるのかもしれない。

 

以上。