zatsu_ten6の日記

ペンシルベニア在外研究、滞在日記

標識

ついでによく授業で昔しゃべっていたことを書くと・・・心理でなくて読んでいただいている人すいません、ちょっと専門の話になり・・。

 

普通の住宅地ではあまりありませんが、大きな道に合流する場合とか、はっきりと前方優先道路と示すために、「Yield]という標識もありますよね。(こういう訳になっているので、変にYield=前方優先と頭に入れちゃうと、当地で試験受けるときに普通にYielldって問題文に動詞としてよく現れるので、「Yield]=「譲れ! 譲る」と考えておかないとミスります)

 

これも交差点で判断としてわかった方がいいので、逆三角形という独特の形の標識になっています。

 

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交差点で横の道が(たいてい右斜めうしろから入ってくる道)裏から見てこういう三角形をしていたら、こちらが優先であって堂々と通過していいということになります。

で、ロフタスの古典的な目撃した記憶の誤誘導の実験でありますよね。

実験参加者にフィルムで、ストップ標識かイールド標識を見せておいて、あとで「ストップ(あるいはイールド)標識の立っていたかどで青いダットサンが・・・(うろ覚え)」とか正しい情報か誤誘導かをしておいて、あとで再認テストすると。

 

授業で学生にこれだけ話すと「そんな些細な道路脇に立っている標識をすり替えたって分かるわけないじゃない。いかにも間違えそうな姑息な実験・・・」

 

違うんですよね。前回書いたように、アメリカで普通に運転していると、そして運転者の気持ち、視点にたって、フィルムを見ていたとしたら、交差点に近づいてくる段階で、運転者になっている実験参加者は、右横の標識を必ず見ます。ストップ標識、見間違えるはずはない、本来。

 

だから、言語的誤誘導で(実験の詳細について後にいろいろ批判もありますけど)あっても、「ストップ標識とイールド標識を誤再認して間違う!!」というのは、たぶんアメリカ人にとってわたしたちの想像以上に「衝撃」なのではないでしょうか。ただ、これだと確かに動作としてはいずれも止まってしまいますので(画面で他の車が曲がってくる)、交差点の状況がオールストップのように横の道も立っているか、横の道のがイールドなのかと(こちらに標識はない)ていう画面を出しておいて間違わせた方が現実的で衝撃が高いかもしれませんが、刺激呈示がエレガントにいかないので難がありますよね。

 

ということで、この標識のすり替えは実はそれほど「些細」ではないと。そういうことで。

 

ついでに書きますと、日常でまじこれ交差点ですごいいちいち見てるのは面倒ですよね。実際、日常的に近所で毎回通る道はこれ、覚えて頭に入っているわけですから、いちいち見ないでも自分優先のところはすーっと走るし、どこがオールストップか(アレンタウンもベツレヘムもすごく多い気がする)覚えちゃいますよね。

 

これ、ひところ社会心理学の社会的認知領域で話題になったメモリーベイズドとオンライン処理の説明にすごく適していてですね、わかりやすい。

 

もう覚えて頭に入っちゃって、それによって交差点を通過するとか、これがメモリーベイズド処理ですね。で、初めてのところとか、わらかないところだから、ちゃんと見て判断する・・・これがオンライン処理ですね。これ、はっきり運転者の意識レベルでも自分がどうしている分かるので、これに類似した体験のある人には二つの処理の違いが非常にクリアに分かりやすい例だと思います。

 

ここで「記憶違い」をしていたら、エライことになりますね。

 

経験がない人はこれを読んで外国での運転とか心配に思った人もいるかもしれませんが、基本的に幹線を走っていればどうってことないです。幹線道路ならこちらが優先でオールストップなんて立っていませんし、対等な大きな道に交わるならきちんと信号機が立っていますから、よけいなことを考える必要はない。

今わたしが大学に来るのも、始めと終わりだけいろいろごちゃごちゃあって、間はすーーっと幹線道路ですから(フリーウェイではない)、35-40マイル(50-60Km)で走って来れています。信号のない田舎道をさーっと走れるようなものです。

 

ちょっとくどい話でお粗末さまでした。