zatsu_ten6の日記

ペンシルベニア在外研究、滞在日記

文明との対決?

日本の現政権のことだ。

 

民主主義をより理想的に運営するためには、国民が主権者として事項を決定しているという政治的有効性の感覚、政策選択への有効性の感覚が必須だ。そのためには選択、判断の基準となる情報が開示されなければならない。しかしなお、政府関連機関、諮問会議などがいろいろ審議を行う。そうした審議に信頼を寄せるには審議過程の透明化が有効である。

 

したがって、文明発展の流れとしては、

 

政治への広い層への参加開放という形で進展すると共に、

決定過程の透明化、情報の提供というのが近年の重要な進展と言えるだろう。

 

前にも書いたが、日本ではとりわけ税金払いたくないという感覚が強い。これはとりもなおさず「税金の使い方は信用できない」ということだ。というか、民主主義国家(にちゃんとなっていないが)の感覚とは異なり、税金を「お上に納めるもの」と思い込んでいる。中世、近世と変わっていないのだ。

 

年貢ならお上が何に使おうと庶民、農民が口出しできるわけがない。それは吸い上げられて「取られた」ものだからだ。「自分(国民)のために使われる」という意識がいまだに薄い。だから少々政権が利得あげて、税金懐に入れて得しても「まぁそんなもんだろう、権力ってものは」という感じで、それを厳しく告発しようとなかなか思わないわけだ。

 

しかし、人類の知恵は、そうした権力は結局腐敗するものだということを学び、それに代わる方法として民主主義を発明し、工夫としてより国民主権を徹底する方策を模索してきた。それが文明の流れというものだ。

 

現政権は真っ向この「文明の進展の流れ」に逆行しようとした。ことごとく「文書秘匿」関連スキャンダルが多いことが報道でも指摘されているが、これは全く偶然ではない。

 

前近代では、権力者は情報開示を行う必要がなく、権力者は自分の思う通りに政策決定、判断を下していてよかった。安倍さんは主観的には「なぜそれが自分にできないのか」不満に思っているのではないか。たぶん彼の「権力像」は前近代のものであって、だからこそ時に国会で「だって自分は○○の長なんだから、何が悪いんですか?」と堂々と発言する。自分は何をしたっていいし、なんだってできる最高地位にいるはずなんだからという彼の思いが現れている。たぶん学校でも「そうでない民主主義的な権力」のあり方を学んだり、まじめに考えたりする機会と能力あるいは動機づけがなかったのだろう。

 

「権力とは暴走するものである」 これが現代の理解であって、それを止める手立てとして憲法などさまざまな知恵が集積されてきた。メディアによる監視や第三者機関などの存在意義も全部そうである。

 

しかし前近代思考であると(メディアも)、暴走をとめる役割の重要性にあまりまじめに自覚的でなかったりする。できればむしろ権力にすり寄って「おいしい目をしたい」ということだろう。うがち過ぎかもしれないが、安倍が朝日を徹底的にdisったあとに、暴露が出てきたのも朝日上層部の判断として「結局安倍の言うこときこうとしたって駄目だ。早く倒さないとうちはやっていけない」という判断が最上層部においても振れたのではないか。

ある意味、情勢判断や顔色見ている点では情けないのである。

 

村社会で国家を運営する限り、監視は働かず、検察も忖度するし、メディも企業も大学もみんな上層部たちはなんとか仲良くなって「内集団メンバー」たらんとしてしまうわけだ。

 

内集団ひいきを「公正」「正義」が打ち勝つには、文明の知恵、その流れを真剣に学び、受け取る強い意思が必要だ。

 

うらを返せば、だからこそ、そんなこと国民全員にできるわけがなく、そうした理性的公正政治 < 忖度する衆愚政治 となりやすく、人口の多い「民主主義」は絵にかいた餅であり、実現への道のりが困難を極める。AIを使うのがひとつの解決法とは以前書いた通りだ。絶望の末の割り切り策だ。

 

しかし、もしかして絶望へとつながる道であっても当面、「文明の流れ」として「よりよい(betterな)民主主義」を求めて努めることに価値がないわけでない。なぜなら遠い先に実現するかもしれない未来ではなく、わたしたちは、現在に生きているからだ。

 

民主主義を実現するためには、どうしたら行政組織が民の奉仕者となるシステムにできるか、民が意思決定に関与し、決定プロセスが徹底的に透明化されるかなど、この道を歩まざるを得ない。

 

もうひとつおまけをつけ加えると、紛争を解決する現代的あり方も経済やパワーバランスを併用して、現実的な戦闘が極力起こらないようにするのが賢い選択、外交であって、日本政府が今それを喜んでやっているようには思えない。「外交の目標」を何に設定しているのだろうか、一体。「勝ちたい」とか「優りたい」とかなんとか、まさに土人(前述)のケンカみたいなもので、文明の知恵としては、いかにそれを回避するかの賢い知恵のもとに国際機関がある。国際機関の言うことを聞かない、人権上の問題や情報開示の問題に後ろ向きになって拒否するのもまさにこうした「文明の流れ」に逆行する振る舞いである。

 

日本を文明の流れの先、先頭グループの一員にもっていきたいのか、それとも、それに背を向けたガラパゴス土人を目指すのか、はっきり考えた方がいい。どの方向に未来は開けるのか。

 

別に首相が交替しさえすればバラ色だとは全く思わないが。今、かねめの人はトランプと仲良しの安倍がやってくれた方が鉄鋼関税の「例外措置」に優遇される可能性を望んでいるかもしれないが、ほんとうにかねめの人は卑しい。


→(後日)なんだ結局トランプから梯子はずされてんの。ほんまにしょうもない「外交成果」しかないなぁ。